【洒落怖】真夜中の音

真夜中の音

俺が15年以上前に体験した怖い話。

当時の彼女と河口湖に行った帰り、中央高速を降りて相模湖のラブホに泊まることにした。
そして二人とも疲れて寝ていたが、深夜2時頃に俺はなぜかふと目が覚めた。

すぐ寝ようとしたけど、なにか胸騒ぎがした。
そのことが気になりつつも、胸騒ぎが収まるかなーと思いながら静かな部屋の天井をボーっと見ていたそのとき、
「パタパタパタ…」
と小さく音がした。

聞き耳を立てると、また「パタパタパタ…ガチャガチャ…」と今度は遠くだが、はっきり空耳じゃないってわかった。

彼女は横で寝ている。
俺はむくっと起き上がり、どこから音がしてるのか探るため更に聞き耳をたてた。
目は暗闇に慣れてきた頃で、どうも音は部屋の外、廊下の奥からしているとわかった。

俺は部屋のドアのところまで言って耳を付けた。
「パタパタパタ…ガチャガチャ…」
パタパタはスリッパの音。
ガチャガチャはドアノブをまわす音。
俺はすぐにそう判断した。
しかも音は近づいている。

「おい。起きて。」
俺は彼女の所にいき小声で言った。
「な~に…?」
彼女が寝ぼけた感じで起きると、俺はすぐにドアの前に戻って「フロントに電話。」と状況も言わずに彼女に伝えた。焦っていた。
なぜならこの部屋はフロアの一番左端だったが、音の感じからもう部屋の近くまで近づいていた。

彼女は俺のただならぬ感じを察したのか、薄暗い中、電話を探り当て、フロントに電話してくれた。
「変な奴が廊下にいるからすぐに来いと言って。」
俺はドアを見ながら、彼女に小声でいった。
外の奴に存在を気づかれたくなかった。
内鍵がしてある。
ここも通り過ぎてくれ。

「なんか出ない…。」
彼女も小声でベットから俺に言ってきたその時、
「パタパタパタ…」この部屋の前でスリッパの音が止まった。
「ガチャガチャ!」ドアノブが回った。
開く訳ないだろと心の中で俺が呟いた。

するとガチャっと何かを鍵を指す音がして、内鍵が横向きから、縦にゆっくり回転しだした。
その時俺は切れた。
ドアノブをガッと両手で押さえ、右足でドアを蹴りながら
「誰だてめえは!クソが!やんのか~!」と大声で怒鳴って威嚇した。
何がなんだか、怖すぎてすごく腹が立った。

彼女は悲鳴を上げて、ベットでうずくまってたようだった。
しばらくドアを押さえつけて叫んでいたが、ドアノブ押さえるのが疲れてきた俺は開き直って「おら開けるぞ!」と叫んで、20cmくらいだけどドアを開けた。

開けた瞬間ぎょっとした。
女がいた。
隙間で暗かったが、うつむき加減で、髪はロングでべたっと濡れた感じ。
暗くて表情は見えないが、目線は俺を見ずに斜め下をじっと見てた。
よく覚えていないが、白っぽい服だった。
「なんだ…あんた…夜中に…」
さっきまでの怒りが止まってしまったが、そいつは
「鍵です。忘れてます。」
と言って俺に木の長い柄がついた鍵を渡してきた。
渡すというより突き出してきた。
目線はこっちを見てない。

俺はそれをもぎ取り、バン!とドアを閉め、鍵をかけた。
「パタパタ…」外でスリッパの音。遠ざかっていく。
非常識な対応に俺はすぐに文句を言おうとフロントに電話した。
今度は繋がり、
「鍵忘れたけど、酷いじゃない?こんな夜中にさあ。」
「はあ?なんのことですか?」と困惑気味の相手。
「いま鍵を届けにきたよ。木の奴。お宅の従業員でしょ?」
「今、私が宿直していますが本日は私一人で他に従業員はおりません。
鍵にいたってはお客様が入る際に渡しておりますし、木の柄ではなく、プラスチック部屋番号が書いてあるタイプのものです。以前に木のタイプはございましたと記憶していますけど─。」と従業員。

「だってここに鍵が…」と言いかけて絶句した。
俺の手には鍵なんかかった。

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