夜の足音
夜な夜な家族がみんな寝静まった頃に、足音が聞こえ始める。
父のうなされる声も日に日に大きくなっていった。
何かに取り憑かれたように、「うわあぁあっああ!!」と突然大声を上げることもある。
だが家族の誰もそんなことを気に止めはしない。
みんな疲弊しきっていたからだ。
今日も夜になり、父はうなされていた。
オレがレポートを中断し、少し遅い就寝につこうとしたところで、隣の部屋のドアが開き、いつものように足音が聞え始める。
足音は階段を下りていって止まった。
台所あたりだろう。
オレは意を決して下に降りることにした。
「お前いつまでこの生活続ける気だよっ…。」
「……。」
「…聞いてるか?」
「……。」
「お前さ、」と言ったところで、
「うわtああgbyっfhんjっ!!」と叫ぶ声とともに体当たりをされてオレは転んだ。
上にのしかかられて、殴りつけてくるやつを蹴り飛ばして応戦する。
今度はオレがやつを投げ飛ばし、冷蔵庫に押しつけボコボコにする。
寝ていた母が飛び起きてきた。
母は何ごとかわめいていたがよくわからない。
泣いていたようだった。
そいつは声音も取れない唸り声を上げるとオレをふりほどき、転げるように台所の収納に向かうと包丁を取り出した。
その後のことはよく覚えていない。
ただただ、逃げた。
何カ所か切られたようだが、刺されてはいなかった。
そして今日も夜な夜な足音が聞える。
オレは卒業後の地方への就職を決意した。
ほんとうに恐い話ってのはこういうことを言うんだよ。
コメント
コメント一覧 (2件)
案外怖いかったです。
バカじゃねえのw